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映画祭、イベント

19 3月 2006 へ 14:00

東京発:『一夜のうちに』監督インタビュー

「ブノワ・ポールヴールドのさまざまな表情を撮りたかったんだ」『一夜のうちに』フィリップ・ル・ゲイ監督インタビュー。

ささいな不幸となんとなく冴えない日常を送る主人公が、一晩を境に自分を取りまくすげての状況が好転し、嬉しいはずの幸せの応酬にいつしか精神を苛まれていく様を描いたフィリップ・ル・ゲイ( Philippe Legay )監督の『 Du jour au lendemain / 一夜のうちに 』。名優ブノワ・ポールヴールド( Benoît Poelvoorde )演じる主人公フィリップの姿を通じて、本当に大切なことは何?自分にとっても幸せはどこにある?ということを深く問いかけてくる作品だ。


―― シナリオのアイデアはどこから?
「まず日常の本当に普通のことや、どこにでもいる普通の人を主人公に描きたかったんだ。どこにでもいて、どこにでもあることについて考えてみた時に、仕事がうまくいかなかった、退屈だ、通勤に1時間もかかるなんて、人がいっぱいいてぶつかって不愉快、だとかいくつもの小さい積み重ねでこの映画を作ってみたいと思っていました。

―― 監督自身のついてない!と思うことってどんなことですか?
「シナリオを書き終わって、俳優に電話をしたらスケジュールの都合がつかなくて出演を断られたり、と思ったら子供たちが悪い成績をもって学校から帰って来た、と思ったらクリーニング屋に物をとりに行くように頼まれていたのを忘れて妻に思いっきり怒られたり…こんなようなことはあります(笑)。」

―― 主演のブノワ・ポールヴールドの劇中での演技の変化が素晴らしいと思いました。彼の起用について教えてください。
「はじめから彼に出演してもらいたいと思ってました。彼は大俳優だし、色んな面を演技の中で見せてくれる俳優だと思うね。コメディをやらせたら天下一品だけど、メランコリックな部分も非常にうまく表現してくれるんだ。彼はすごく好奇心が強くて、ものすごく本も読むし考察も鋭いんだ。社会をいつも疑問をもって見ている。そういう彼の人間性が、ああいう幅広い演技を可能にしているんだと思う。」

―― 妻役のアン・コンシニュイ( Anne Consigny )も今回この映画祭のために一緒に来日していますね。
「彼女は人間的にも非常にチャーミングですよね。映画館でこれを見た男性はみんな彼女と結婚したいと思うんじゃないかな(笑)。彼女は優しさと同時に残酷さを表現してくれたよ。一度はブノワ扮する夫を捨てるけれど、また徐々に彼に惹かれていく、そういう女性の気持ちの変化をうまく演じてくれたと思う。」

―― なぜ一夜のうちにすべてが好転したのか主人公はつきつめようとしていますが、そこに理由はなく「単なる偶然」として描かれていますね。でも映画自体は非常にファンタスティックな雰囲気ですね。演出で気をつけたことは?
「とつぜん人生が好転するのはファンタスティックなことだけど、よくよく辿るとすべてに理由があるんですよね。犬がほえなくなったのは死んだから、雨が止んだのは天候が変わったから、ピザに卵が乗らなくなったのはピザのお店の人が彼のアレルギーに気づいたから、そういう様々な理由がありますが、「なぜ同じ日に叶ったのか」というのが偶然ですよね。主人公はその原因をつきとめようとしますがあきらめます。人間はこういう状況に置かれたら理由を探すと思いますが、“結局は偶然でしかないんだ”ということを見せたかったんです。また一番みせたかったことは、不幸だった月曜と突然幸せが舞い込んでくる火曜の間の “断絶”ですね。」

―― 監督の一番お気に入りのシーンは?
「好きなシーンはふたつあって、ひとつは女の子とローラースケートを履いてデートして一晩を一緒にすごした翌日の朝の主人公の表情です。ちょっと責任を感じながらも照れくさいような、そういう彼の様子を撮ったところが好きです。
あともうひとつは、妻と妻の恋人を弁護士事務所に呼んで、彼を選んだ方がいいよって身を引くシーンです。自分を犠牲にして妻の幸せをかなえようとするんですが、一番彼の性格が現われる部分だと思います。自分は今の幸せに値していない、というのがこのひと言に現われていると思います。」

―― 女の子とローラースケートでデートするあのシーンは街頭でいろんな人がローラースケートを履いてレースのようなことをしていますが、あれは有名なイベントかなにかですか?
「あれは、パリでよく行われていることなんですよ。3年前くらいに、30人ぐらいのローラースケーターのグループが許可なく滑って警察に捕まってしまったんですが、「どうしてもローラースケートがやりたかったんです!」という彼らの訴えを聞いたパリの警視総監が金曜だけ許可をしてくれることになったんです。そこからはじまったこのイベントは、今では参加者が1万人くらい集まるものになりました。2時間くらいすべって深夜1時頃に終わるんです。暴力事件なども起きたことがないし、この瞬間はおそらくみんな幸せなんですよ。だから女の子とのデートする幸せなシーンを描くのに最適だと思ったんです。」

―― 主人公の運命を左右するキーとなるのが冒頭とラストで2度描かれるエスプレッソマシーンの爆発ですが、それぞれ意味は違っていると思いますが最後の爆発に込めた意味とは?
「冒頭のエスプレッソマシーンの爆発は、彼の運のなさ、無能さを象徴する存在として描きました。しかし幸福の応酬でだんだんと現実の尺度を失っていった彼は、最後にはエスプレッソマシーンの爆発が彼を自由にする、解放する役割を果たしているんです。」

 フランス映画祭(日本) - 2006 / 日本 

Author : ユニフランス東京事務所

最終更新日 : 26 6月 2009 へ 14:00 CEST

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