あらすじ サントマリー・ド・ラ・メールが冬眠から抜け出した。闘牛シーズンの始まり、闘牛場のバー“シェ・リュリュ”ではファンや最初の観光客のための準備が万端。 女主人、リュリュは幸せ一杯。まだリュシアンと呼ばれていた17歳の頃、違った人生を歩むために姿を消した。ホモセクシャルと闘牛文化は相容れないものである。性転換手術を受けるまでドラッグや売春にはまっていたリュリュは今では誇りを持って生きることができる。サントの人々が避けて通れない場所にバーを作り、自分を認めさせることができたのだ。 今年も闘牛ファン、ジャーナリスト、観光客、みなが集う。その中にはいつものようにカウンターに居座る、牛番兼浮浪者のパトリック。皆から尊敬されているパリの日刊紙の闘牛評論家シモン、彼の神秘的な孤独はリュリュに親しみを持たせる。それから新参者サミュエル。彼は周囲の雰囲気とかみ合わず、リュリュだけが分かってくれているようだ。そしてカウンターのこちら側にジョン。水と光にあふれたこの土地で再び生きるためにリュリュが選んだ男。 リュリュの幸せは何者も侵しがたいように見えたが、ある日逃走中のかつてのひものファビオが不意にやってきて、昔の女をゆすろうとする。どうにか忘れていた過去に再び捕らえられたリュリュはうろたえる。ジョンが中に割って入り、事態は掌握できたようだ。ところが翌晩、ファビオの死体が車の中で発見される。 怨恨、嫉妬、不寛容が狡猾に本領を発揮するこの世界で、「おかま」のリュリュはもちろん理想的な犯人である。動転したリュリュはシモンの助けを借りて逃亡し、ボーデュックに避難する。その間うわさが大きくなっていく。 ジョンが逮捕されてしまい、リュリュは耐え切れずに憲兵に自首する。ところがすぐに、リュリュの意図に反し書類は軽く、予審判事は彼女を裁判所による監視下に置き、憲兵隊から捜査権を剥奪し警察に託す。そのときサミュエルが再び現れる。この警視は最近アルルの警察に異動となったのだ。彼は少なくとも遊び半分で捜査に取り掛かる。理由はないのだが、サミュエルはリュリュが犯人ではないことを確信する。 ところがリュリュが再び失踪する。今度は近隣の大都市、マルセイユで群衆に実を隠すことにしたのだ。リュリュが誰にも内緒の目標を目指しているのでなければ、脈略のない行動。実際このシモンの友人の暇な若者、すべてを知るブレーズとリュリュが画策した逃避行は、ただサミュエルをマルセイユに越させるためのものだったようだ。 ありそうもない謎の解決より、人間の隠れた面を明らかにしようとする警察による真偽の捜査の物語は、フラッシュバックの中で紐解かれる。リュリュがまだ両性具有の青年だった頃、サントマリー・ド・ラ・メールの闘牛場の観覧席で…。
|