「わずか13分。だけど、編集が終わるまでに8ヶ月間掛かったんだ」短編『フルシニコフ・メソッド』グレゴワール・シヴァン監督インタビュー。
アレクサンドルは25年前に謎の死を遂げた巨匠監督ロマン・グブリックの息子だ。 彼は父の未完の大作を完遂させるべく、当時の関係者に取材を開始するが・・・。グレゴワール・シヴァン( Grégoire Sivan )監督『The Bourchnikov Method 』はクレイアニメによる短編作品である。本年のクレルモンフェラン短編映画祭でその才能を認められたシヴァン監督はこれから長編に取り掛かるのだとか。完成したら「この映画祭にぜひ出品したい!」と照れながら話してくれた。
――伝説の映画監督ロマン・グブリック。誰かを想像させますが・・・。
グレゴワール・シヴァン そうでしょう(笑)。名前からわかるようにロマン・ポランスキー、そして、キューブリック。僕の中にはヒッチコックやゴダールのイメージもあったよ。
――チェスがキーワードになっている通り、やっぱりチェス好きなんで?
グレゴワール・シヴァン いや、実はそうでもない(笑)。チェスに興味があったわけではないんだけどチェスの持つ規則性に惹かれてね。ある種の人間関係に通じるというのか、他者との関係性が記号化されたもののような気がする。
――クレイアニメを選んだわけは?
グレゴワール・シヴァン 映画学校にいた頃は実写を撮ったこともあった。でも、アニメは素材さえあれば一人からでもできる。もちろん、低予算のものって条件がつくけど始めるのは難しいことではないんだ。本作は学生時代から一緒に作ってきた仲間たちにも協力してもらったんだ。
――この作品は完成までに半年以上を要したそうですが。
グレゴワール・シヴァン そうだね。僕自身はイラストは描けないんだけど、クレイ人形を作り、舞台を作り、ちょっとずつ動かして撮影をして・・・、そして、編集が終わる頃には8ヶ月が過ぎていた。13分間の作品でもね。
――影響を受けたアニメーション作家は?
グレゴワール・シヴァン そうだな、ティム・バートンの『ナイト・メアー・ビフォー・クリスマス』も好きだし。チェコのヤン・シュヴァンクマイエルもそう、もちろん、宮崎駿のポエティックな世界は大好きだ。宮崎の作品はフランスに来たのが少し遅くて、『もののけ姫』を最初に見たんだ。その後に『魔女の宅急便』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』を見た。これまで、アニメの監督というと実写作品より評価が低いような、そんな風潮があったけれど宮崎駿はその境目をなくしてくれた人だと思う。
僕は日本のアニメが大好きで、ほかには『AKIRA』(大友克洋監督)や『パーフェクト・ブルー』(今敏監督)も凄いと思ったね。『パーフェクト・ブルー』はおそらく低予算作品と思うのだけどシナリオは素晴らしいし、構図的にブライアン・デ・パルマの映画を見ているようだったよ。
(取材・記事構成:M・T)