「賞をもらえて、とても嬉しい。でも、僕はゲイフィルムを撮ったつもりじゃなかったんだ」『ワイルド・サイド』セバスチャン・リフシッツ監督、ステファニー・ミシュリニ単独インタビュー。
トランス・ジェンダーの娼婦、ロシアからの不法移民、時に女にも身を売るゲイーー孤独な3人の魂のふれあいを、時に激しく、時に優しく描いた『Wild side / ワイルド・サイド 』。娼婦ステファニーを演じたステファニー・ミシュリニ( Stéphanie Michelini )は役と同様にトランスヴェスタイトで監督は会うなり、ほとんど一目ぼれしたというのだが…。
――どういう経緯で2人は出会ったんですか?
ステファニー・ミシュリニ 知り合いの知り合いがキャスティングディレクターでトランスセクシャルの俳優を探してると聞いたの。セバスチャンの作品は偶然にも2週間前に観たばかりだった。それから、ナイトクラブのバーで彼を紹介された。最初は雑談をしただけで映画の話はほとんどしなかったわ。
――監督に。ステファニーの印象は?
セバスチャン・リフシッツ( Sébastien Lifshitz )監督 彼女は自然体だった。優しさに溢れていて女性らしい。人々が一般的に持つトランスセクシャルのイメージーー人工的で作られたタイプとはまったく違ったね。彼女を深く知りたいと思った。
――ステファニーさんはどんな役柄か、最初からわかっていたので?
ステファニー 俳優を探していると聞いたときもエキストラ的な扱いだろうとばかり思ってたの。ところが、3回目にセバスチャンと会ったとき、台本を渡されて主役だと知り、びっくりしたわ。ただ、戸惑ったのは最初だけでその後はチャレンジしようって気持ちの方が強くなった。
――役名は本名と同じですね。
ステファニー 最初はシルヴィって名前だったの。でも、私には年輩の名前に思えて、あまり好きではなかった(笑)。それがいつかステファニーに変わったのよ。
――演技経験は初めてですよね。プレッシャーは?
ステファニー もちろん、あったわ(笑)。でも、監督と他の俳優と何度もリハーサルをしたので。それにシーンによっては前もって知らされずにいきなり撮ったりしたからその分、緊張は薄れたわ。
この映画はショッキングなシーンも多いし、ショッキングではなくても母親との場面は難しかった。というのも、母との触れ合いを個人的に知らなかったから。私はこれまで映画の世界とはまったく別――バーで働いたり、保育園で働いたりーーのところで生きてきたけれど、今後もいい役があるならば女優業をやってみたいと思っているわ。
――本作はBerlin International Film Festival で最も素晴らしいゲイ・フィルムに捧げられるテディ・ベア賞を受賞しました。
セバスチャン・リフシッツ監督 これは栄誉なこと。だけど、嬉しいと同時に自分に対する疑問も湧いてきた。『ワイルド・サイド』はゲイ映画として表彰されたわけだけど、果たして自分はゲイ映画のつもりで撮影をしたのだろうか?答えはそうじゃない。ゲイだとかストレートだとか、そんな境界線はなしに、僕は人間を描いたつもりだ。だから、この作品はジェンダーに関わりなく、いろんな人に観てもらいたいと思う。
横浜 フランス映画祭 - 2004 / 日本
(取材・記事構成 M・T)