アルジェ女性の自立を描く『 Viva laldjerie / ビバ!アルジェリア 』、 ナディール・モクネッシュ監督、ナディア・カシ、ビュウナ:インタビュー。
--アルジェリアを舞台にした作品を見たのはほとんど初めてのような気がします。撮影は大変だったのでは?
ナディール・モクネッシュ( Nadir Moknèche )監督 98年に撮ったデビュー作もアルジェリアでの撮影を考えてたんだけどそれは断念した。今回も最初はきっと大変なことになるだろうなと思ってた。隠しカメラでの撮影はしたくなかったしね。でも、公道での撮影にしても当局も住民も非常に協力的だった。市民はアルジェリアの悪いニュース、世界から孤立したイメージにうんざりしていたのさ。アルジェリアはカブールだけじゃないからね。
ーー元ダンサーの貧しい母親パピーシャに扮したビュウナ( Biyouna )さんに。演じたキャラクターをどう解釈しますか。
ビュウナ 監督とは前作からの付き合いで私の秘密をよく知ってるの(笑)。私自身、かってダンサーだった。60年代、70年代のアルジェリアでダンサーとして生きることは非常に難しかった。そういう意味でパピーシャという女性は私の一部のような気がしたわ。
監督 パピーシャのキャラクターは元ダンサーというグラマラスのイメージ、しがない母親のイメージ、そして、ビュウナ自身の歌手としてのイメージを重ね合わせたものなんだ。シナリオを書いている時から彼女を想定していたね。
-ーナディア・カシさ( Nadia Kaci )んに。あなたが演じた娼婦フィフィをどう思いますか?
ナディア・カシ フィフィは遠くて近い存在ね。最初は自分とまったく似ていなかったけれど(笑)、演じているうちにだんだんと近くなってきたわ。というのも、監督は人物をどこまでも人間的に、深いところまで掘り下げてくれる。フィフィという女性は寛大で人に与えようという気持ちが強いの。それに、娼婦の暮らしを強いられても、自分が社会の犠牲者だとは思っていない。魂を入れ込んで演じるのに値する人物だったわ。
監督 ナディアには今回の映画に出てもらうつもりだったけど、役柄を決めていなかった。だけど、ある時会ったらフィフィみたいな格好をしていたんだよ(笑)。
そこから、この人物を膨らませていったんだ。
--撮影中のエピソードを。
ビュウナ ここにいる監督ナディール・モクネッシュは映画を撮ることで、アルジェの息詰まった空気に酸素を与えたの。撮影中、住民の女性たちはバルコニーから
身を乗り出し、「ユーユー!」って歓声を上げたわ。アルジェでは歓声を上げるとき、「ユーユー!」というのだけれど、そこにはたくさんのありがとうが込められているように思えたの。
ナディア・カシ 劇中では犯罪に巻き込まれそうになったフィフィが大きな広場を走り抜け、逃亡するシーンがあるの。それを撮影した日は広場に人がたくさんいて、映画を撮ってるって気づかれることもなかったのよ。夢中になって走ってるとき、一人の老女にぶつかったわ。そうしたら、彼女は「あなた、大丈夫?何かあったの」って真顔で聞かれたの。本当に、危険が迫ってるように思われたみたい(笑)。でも、他人でもそうやって心配してくれるアルジェの人の優しさに感動したわ。
--3人とも今回、日本は初めてだそうですが。
ビュウナ まだついたばかりで宿泊ホテルしか見てないけど(笑)、日本人はすごく礼儀正しいというイメージがあるわ。アルジェの日本大使館の人たちには本当に親切にしてもらったし。
監督 僕もそう思うよ。日本という国はそれこそ、映画の中でしか見たことなかったけれどみんなエレガントで繊細という感じがする。あと、そういえば空港についた時に若い女の子たちが床に座って誰かを待っていて、その光景がなんだか面白かったな(笑)。ちなみにこの映画祭のあとに1週間ほど休みを取って、日本を旅するつもりなんだ。
ナディア・カシ 日本の文化にはものすごく憧れてるの。若い人たちはエネルギッシュだし、今回、来れてよかったわ。