人生をユーモラスに描くハッピー・コメディー『 Crustaces et coquillages / マリスコス・ビーチ 』オリヴィエ・デュカステル&ジャック・マルティノー監督 インタビュー。
“ジャック・ドゥミの後継者”とも謳われている、『愉快なフェリックス( The Adventures of Felix )』『ジャンヌと素敵な男の子( Jeanne and the Perfect Guy )』のオリヴィエ・デュカステル( Olivier Ducastel )&ジャック・マルティノー( Jacques Martineau )監督第4作目は、登場人物たちが自分の欲望に忠実に動く様をユーモアと誠実さを交えて描いた娯楽作だ。ちょっとしたおとぎ話のようなストーリー展開にハラハラし、最後のダンスシーンの軽快さにスカッと元気づけられる。
――ゲイや不倫といった重くなりがちなテーマを取上げようと思ったのは?
オリヴィエ「まず最初は主人公のマルクが若い頃に男の子に恋をして、でも結局子供が欲しいと思ってベアトリクスの愛を選んだ。そしてかつて恋愛をしていた所へ帰ってくる。そういったところからアイデアが始まって、そこにいろいろなエピソードを加えていきました」
―― 登場人物が多くて展開が大変だったと思うのですが。
ジャック「そうですね。複雑な要素が絡まっているので、脚本を整理することが必要でした。登場人物たちは次々に、しかも1人1人出てくるので。そしてそれぞれ事情があって、面白さがあったりしますよね。例えば、配管工のリリエはジャン=マルク・バール( Jean-Marc Barr )が演じているのですが、彼はわりと後で出てきます。そこは計算した点で、ジャン=マルク・バールは皆が知っている人で、彼が出てくるのを待っているわけです。そこでそれを待たせておいて、リズムをつけるよう工夫しました」
―― 監督と脚本をお二人で務めていますが、パートナーとしてお互いどんな存在でしょう?
オリヴィエ「難しい質問ですね(笑)。ジャックはどちらかというと外交官的というか儀礼的なところがあると思います(笑)。論理的というか筋の通ったものが得意ですね。仕事でも、俳優達は心理的なことに関してはジャックのところへ行くし、撮影など技術的なことは僕のところへ来ますね」
ジャック「自分の場合はとても簡単です。ジャックはとってもハッキリしているところと、頭が固いところがある(笑)。自分が何をしなければならないのかよく知っていて、それに恐怖感を持っていません。やり遂げるためには、ねばってねばってやるタイプです」
―― ラストのダンスシーンは、北野武監督の『座頭市』からインスピレーションを受けたと聞きました。普段から日本の作品は観ているのですか?
オリヴィエ「パリで日本の作品が上映されることはあるんですが、紹介されているのはごく一部だと感じています。フランスで観るものとしては北野武監督、宮崎駿監督ですね」
ジャック「私もオリヴィエと同じ作品を観るのですが、北野武監督作品からインスピレーションを受けたことが2回あります。『ジャンヌと素敵な男の子』では『HANABI』から編集段階でのアイデアをもらいました。そしてこの『マリスコス・ビーチ』で『座頭市』に影響を受けました。あとは宮崎駿の夢を与えるような雰囲気が大好きです。例えば『となりのトトロ』とかね」
(取材・記事:yamamoto)