「作品を見て、自分自身というものを見い出して欲しい」『 Lemming / レミング 』脚本ジル・マルシャン( Gilles Marchand ) インタビュー。
『 Qui a tue Bambi ? / 誰がバンビを殺したの? 』の監督として一昨年映画祭に参加したジル・マルシャンが、今回は脚本として再来日。ちょうど2年前に映画祭で行ったインタビューで「ドミニクのために脚本を書いている」と話していたのが、この『レミング』だ。仲の良い夫婦に忍び寄る、得体の知れない恐怖。監督でもある盟友ドミニク・モル( Dominik Moll )との共同脚本作だ。
――2度目のフランス映画祭ですね
「はい、今回も楽しんでいます。今回はシナリオライターとしてなので、脚光を浴びる事が少なめで自由にしています(笑)」
―― 『レミング』はどこから物語を発想されたんですか?
「一番最初はドミニク・モルからのアイデアです。水道の中にレミングが詰まっているというのが最初にあって。レミングは北の方に住んでいる 絶対にフランスにはいないネズミです。そこから、閉じている紙が広がっていくように“不安”を描きました」
―― 豪華キャストの競演も見ものですが、シャーロット・ランプリング( Charlotte Rampling )の存在感が特に強烈でした。彼女をイメージしながら脚本を書いたのでしょうか?
「いいえ。しっかり考えないとキャラクターが動かないというのが僕とドミニクの考え方です。最初からキャスティングをすると、彼が演じるからこうだと決め付けてしまって、しっかり人物が動かないと思うからです。ですが、実際にキャスティングしてみると、キャストの強い個性と切り離せなくなって、彼女のために書いたように見えるというケースはけっこうあります。今になれば、観客も監督も私もそうですが、この役はシャーロット・ランプリング以外にいないだろうと思っています」
――注目して観て欲しいところは?
「作品を見て、自分自身というものを見い出して欲しいです。もちろん登場人物の行動をすべて理解してもらう事はできないと思いますが、登場人物に共通点を見出して欲しいですね」
―― あなたはどの登場人物に似ていると思いますか?
「ローラン・リュカ( Laurent Lucas )が演じたアランかな。脚本を書いている時点で入れ込んだのは、シャーロット・ランプリングのアリスと、アンドレ・デュソリエ( André Dussollier )のリシャール・ポラックですね」
―― ドミニク監督には意見をいったりも?
「僕とドミニクはとても特殊なケースで、彼の作った監督作でも現場に行って見ていましたし、僕が監督の時は彼が来てくれる。脚本が現場に来る事を好まない監督の方が多いので、これはとても特殊なケースです。僕らは20年来の付き合いだし、でしゃばるつもりはないけど、時間のないドミニクに代わって俳優さんにアドバイスをしたりはしました。あくまで監督はドミニクで、僕はコンサルタントです(笑)。困っていたら、お互いに助け合う関係ですね。ドミニクは細かい所まできっちりしたい、要求の高い人だと僕はよくわかっていますし、それをフォローするということはしました」
―― とても信頼関係があるんですね
「そうですね。だから言ってみればぼく達は“共犯者”といえるんじゃないでしょうか(笑)。罪を犯すときも一緒だけど、喜びを分かち合う時も一緒と言う意味でね」
――人間の暗い部分を描くのがあなたの作風と思うのですが、そこに惹かれる理由は?
「対比しているものというのは好きですね。僕も一見やさしそうに見えるでしょ?(笑)だけど人間の心はそんなに簡単なものではなくて、複雑なものです。陽が当たっているところもあるけれど陰の部分もある。人間に興味を持つということは両方の面に関心があると言うことです。なので陰のある人物を描きたいと思うんですね。善も悪も持ち合わせているのが人間ですから」
―― 次回作の予定は?
「ドミニクとの共犯者という関係が続いています(笑)。前作と今作に5年の間があって、これだけの時間は空けないようにしようと今2人で平行して脚本を書いているところです。それが完成して、またフランス映画祭に持って来られたらと思います」
(取材・記事:yamamoto)