5年ぶり、待望の新作『 Lemming / レミング 』、ドミニク・モル( Dominik Moll )監督インタビュー。
今回の作品を作ったきっかけは?
「お金です(笑)。それは、冗談で、きっかけというより、流しが詰まってそこからレミングが見つかるという話が面白いと思い、レミングはどこから来たのかというのが出発点となりました。」
レミングが流しの排水口に詰まっていたというのはかなりインパクトがあったのですが、レミングが詰まるという発想はどこから出てきたのでしょうか?
「主人公のアランは仕事・プライベートが自分の計算通りにいくことが幸せだと思っていました。話が進んでいくにつれて、計算が狂っていき、妻の心がわからなくなり、ついには自分自身の感情さえコントロールできなくなってゆきます。物事が狂い始めるきっかけであり、映画の中の最初の説明できない事柄というのがレミングという存在なのです」
前作に引き続き俳優のローラン・リュカ( Laurent Lucas )を起用していますが?
「彼は、共同脚本家のジル・マルシャン( Gilles Marchand )の以前の作品にも出演していて、最初の段階で彼が演じるということは頭にありましたが、私は別の俳優でやりたいと思ってました。というのも、私は映画は毎回違う俳優を使った方が良いと思っていて、今回の場合は他に合う俳優がいなかったということで、ローラン・リュカにしました。彼はジェームス・スチュワートのようなノーマルな演技から危ない感じの役まで演技の幅が広く、色々な引き出しを持っている素晴らしい俳優であり、そこが彼の好きなところです」
結果的に彼をこの役にして成功でしたか?
「もちろんです(笑)」
シャーロット・ゲンズブール( Charlotte Gainsbourg )はどのような経緯で決まったのですか?
「ベネディクトの役については、何人かのカメラテストをしましたが、シャルロットは映画の中で見せる不安な部分を表現できていたし、この映画の雰囲気に一番合っていました。また、ローラン・リュカとの息もぴったりでした。ベネディクトという役はシャーロット・ランプリング( Charlotte Rampling )が演じるアリスとの関係が重要なのですが、そういった意味でも2人の内面から出てくる共通のものがあったので決めました」
シャルロットの女優として優れている点は?
「4人の俳優に共通している点になりますが、持っている力を全て出すだけでなく、抑える事によって内面の感情をうまくコントロールできる人たちだと思います」
ジル・マルシャンとの共同脚本でしたが、どちらかが先に話しを考えてたりたのですか?
「今回は、ファーストバージョンは自分が考えていて、その後二人で練っていきました。映画の初めの部分は、ほぼ私が書いたものと同じですが、その後は変わりました。二人で話し合って、どう展開していくかなど相談しながら進めていきました。時には、お互い自分で書いてみて、それを見せ合いながら決めていきました」
シャーロット・ランプリング演じるアリスが「夫婦の間がうまくいかなくなったらどうするの」といった質問がありましたが、監督自身はそのことについては、どうお考えですか?
「個人的には、カップルは初めは全てが幸せで、うまくいっているが、関係を維持していくのは難しくなっていくと思う。しかし、全ての夫婦が最終的に別れてしまうという悲劇的な終わり方をしてしまうわけではないので、そういうことを恐がってはいけないと思います。しかし、関係を維持していくには努力をすることが必要だと思います」
レミングは途中で凄く増殖していますが、監督はレミングにどのような意味付けをしていたのでしょうか?
「レミングは、増殖しているというよりも、途中で突然多くのレミングが出てきますが、それは自分の矛盾する気持ちの爆発を意味していると思います」
最後に、この映画で苦労した点や、特に注目して欲しいシーンなどはありますか?
「映画制作においては、常に苦労の連続です。しかし、それがあるからこそ完成したときに喜びを感じることが出来ます。映画作りで一番大変なのは、不安と戦うことです。自分の作っている作品は良いものなのか、自分の決断は正しかったのかなどの不安との戦いがあります。撮影中、人間関係や技術的なことなで苦労はありませんでしたが、やはり、全力を尽くしたとしても、不安を消すことはできません。だからこそ完成した時、お客さんの反応を見たいという気持ちになるのだと思います。見てもらいたいシーンについては、どこと言うのは難しいです。個人的には気に入っているシーンなどはありますが、あえていいません。(笑)とても苦労したので、最初から最後までしっかり見て欲しいです」