「イレーヌは実生活に満足しているけれど、夢見る部分を補おうとしているの」『海が満ちる時』ヨランド・モロー インタビュー。
個性溢れる名脇役として活躍してきたヨランド・モロー( Yolande Moreau )。『 Quand la mer monte... / 海が満ちる時 』は彼女が主演、共同監督、共同脚本を務めた大人のラブ・ストーリーだ。ユーモアと切なさを絶妙なバランスで織り込むその語り口はけっして派手ではないが、登場人物達の物語を心に深く刻みつける静かなパワーを持っている。最初は1館のみの劇場公開だったが、口コミで評判が広がり大ヒットしたというのも納得の作品だ。そしてインタビューしたヨランド・モローは、まるで映画からそのまま抜け出てきたかのようにチャーミングな人だった。
―― フランス映画祭は初めての参加ですね
「そうです。いい映画祭だという噂を聞いていましたので、楽しみにしていました。私達の映画がどのように受けいれられるのか楽しみです」
―― 監督、脚本を務めることになったきっかけは?
「ジル・ポルト( Gilles Porte )と共同で監督、脚本をやっているのですが、彼がもともと私が20年前に書いた舞台用の作品を見て、それをやろうということになったんです。5年くらい綿密な共同作業を続けて、職人技のようで大変でした(笑)」
―― 作業はどのように進めたのでしょうか?
「2人とも自分の世界観をもっているので、お互いに補い合ったというところがあります。私は書いたり、自分の世界を伝えたりが中心で、ジル・ポルトは撮影助手の勉強を受けていましたので、撮影チームを担当するなどをしていました。準備に長い時間をかけて、ロケハンをしたり、私はどう動くか、彼はどう撮るかというように作業を進めました」
―― この物語のアイデアはどこから?あなた自身巡業していたことがあるそうですが、イレーヌのようなラブロマンスを経験したことはありますか?
「私はそういった人生経験はないのですが(笑)、アイデアの目的は、実生活を演劇の中にどう置き換えるかということです。イレーヌは結婚していて夫もいてうまくいっているし、娘もいて満足しているけれど、夢見る部分を補おうとします。一人芝居の中で、会場の人を上げるというのも足りないものを補っていると言えます」
―― 一人芝居のシーンは、実際にあなたが上演している時に撮影されたとか。アート性が強いお芝居でしたが、作品の中の観客は爆笑していましたね。ああいったお芝居はフランスでは一般的なのですか?
「コミカルだけではなく悲喜劇でもあって、なのに半端な衣装といったところが観客には馬鹿馬鹿しい。滑稽な面と悲劇的な要素も両方あるということです。確かにこういったものはフランスではとっても多くて、一人で演じる舞台もたくさん上演されていますね」
―― なるほど。では最後に、監督をまたやってみたいと思いますか?
「続けていきたいと思います。情熱を持てる作業ですし。脚本を書くことはもちろん、映像にも興味がありますので、ぜひやってみたいです」
(取材・記事:yamamoto)