フランス映画の魅力とは?マルガレート・メネゴーズユニフランス会長インタビュー。
横浜市とともに、フランス映画祭横浜を主催しているフランス映画の海外プロモーション団体 Unifrance 。今年で就任3年目を迎えた会長、マルガレート・メネゴーズ( Margaret Menegoz )が考える映画祭の魅力、フランス映画の魅力とは。
Q:フランス映画祭横浜はフランスの映画界においてどのような存在ですか?
A:まず何より、監督や俳優たちが日本の観客と直接触れ合うことのできる場。それから、輸出する側にとっては、日本の配給会社、アジアの配給会社とコンタクトが取れる場です。また、フランス国内で監督や俳優たちが互いに接触するには、通常は正式な手順が必要となりますが、ここでは非公式的にいろいろな人と出会えますから、より自由な形での映画制作のきっかけが生まれる。そんな場でもあります。
Q:具体的に映画祭で目指していらっしゃることは?
A:カンヌのように賞を授与する映画祭ではなく、日本の観客をフランス映画に呼び込むことが目的です。ですから、今年は、ワーナー・マイカル・シネマズ、 109シネマズMM横浜での同時上映を決めました。日本の配給会社へのアピールも大切です。6月というと、まだあまり日本の会社は映画を買い付けていません。ベルリン映画祭、カンヌ映画祭もありますが、そこには日本の観客の生の反応を知る術がないからです。つまりこの映画祭では、上映映画の評判を肌で感じてもらい、それによって買い付けの意欲を高めていただければと思っています。
Q:日本のマーケットの魅力は?
A:買い付けられた映画の本数は多いですから、かなり大きな市場だと思います。ただ、問題なのは劇場の少なさ。フランス映画に限らず、多くの映画が、上映館を確保できない、十分な公開期間を与えらない、観客にアクセスできないという問題を抱えていると思います。フランスの人口は日本の約半分ですが、映画館は5000館あり、日本には2000館しかありません。さらに、日本の多くの劇場は2年先まで満杯の状態で、上映すべき作品がウエイティング・リストに乗っている状態なのです。今年は映画祭の出品作品がシネコンでも上映されていますから、フランス映画は人気があるというところも証明したいですね」
Q:日本にはフランス映画ファンが多く、フランスでは日本映画が正当に評価されています。この関係についてどう思われますか。
A:おっしゃる通りですね。コスタ=ガヴラス( Costa-Gavras )も言っていますが、1960、70年代、フランスは日本の映画から感銘を受けています。小津安二郎、溝口健二、黒澤明らの生んだ芸術的で美しさ作品が共感を呼び、それは今も続いていて、フランスでは日本の映画を観たいという要望はまだまだあります。ですから、フランスでももっと日本の映画はきちんと上映されるべきだと思いますし、同じことが日本におけるフランス映画についても言えます。日本にはユニジャパンという団体がありますが、ここがCNCと同じような役割を持っていますから、大きな信頼と期待を寄せています。いつの日か、パリや東京で、日仏、仏日映画祭をやりたいですね。
Q:今年の映画祭の上映作品から見えてくる、現在のフランス映画の傾向というものはありますか?
A:フランス映画の特殊性は、バラエティに富んでいること。作家性のある映像、文学作品、娯楽映画、喜劇もあります。また、女性監督が多いということろも特徴かもしれません。年間制作される200本の中で、30~40本が女性映画です。
Q:女性が活躍しやすい土壌というのが、フランス映画界にはあるのでしょうか?
A:フランス映画界が特別な土壌を持っているわけではないと思いますが、フランスでは議員の数が男女ほぼ同数。そこからさまざまな配慮が生まれているのかもしれません。個人的には才能に性別はないと思っていますが、家族をまとめる力の延長でスタッフをまとめる力があり、男性より忍耐強いと感じていますね。また、目標に向かって突き進む際の持続性にも優れていると思います。映画制作において大きな存在である有能な助監督には女性が多く、監督の支援を得てデビューする機会も増えているのかもしれません。キャスティングで大きな役割を担うのも助監督なのですが、俳優と接触する機会が多いので、そこで作り上げたネットワークを活かしやすいという利点もあるでしょう。
Q:女性監督の活躍の場は増えているのでしょうか?
A:そうですね。先駆者たちはすでに50代になっていますが、その後の世代、今回来日しているような若い女性監督たちも多く生まれつつあります。ですが、私がプロデューサーとして仕事をするときは、まずシナリオを読んで、その人を信頼できるかで判断します。そういった意味での差別はしませんし、女性だからといって優遇もしません。
Q:最後に、今後、日本で展開していきたいフランス映画PRのための戦略について教えてください。
A:「日本の配給会社と対話をしながら、必要な援助を行いながら、日本の市場を良く理解したうえで、さまざまな計画を着実に進めていきたいと考えています」
(文・取材:牧口じゅん)