一八六七年。モスクワからドイツの遊都バーデン・バーデンに来た二十五歳のアレクセイ・イヴァノヴィッチ(ジェラール・フィリップ)は、激しい気性 と狂気に近い情熱の持主である。将軍ザゴリヤンスキー伯爵(ベルナール・ブリエ)の待つ豪華なホテルに家庭教師として着いたアレクセイは、意外な事実に唖 然とした。破産一歩手前の将軍は、モスクワにいる伯母バーブシュカ(フランソワーズ・ロゼー)の遺産をカタにフランスの将軍デ・グリュウ侯爵(ジャン・ダ ネ)から借金し、侯爵の方も、最後には将軍を騙して金をまきあげるつもりで将軍の愛人の女山師とつき合っている。そんな彼らを平然と眺めている傲慢な将軍 の養女ポリーヌ(リゼロッテ・プルファー)も、侯爵の正体を知りつつ身体を与えていた。ポリーヌにアレクセイは恋心を抱いたが、勿論彼女は受付けなかっ た。彼は侯爵と女山師の下心を暴こうと決心したが失敗し、モスクワに戻るはめになってしまった。けれど運よく病気のはずの伯母バーブシュカに出会い、彼女 に雇われたアレクセイは遺産目当の連中に一泡吹かして復讐しようとした。退屈なホテル生活にあきた伯母が賭博場に行きたいと言い出した。初めこそツキま くっていたが、異様な雰囲気にまきこまれた彼女は全財産をすってしまった。茶番劇は終った。侯爵はポリーヌを捨て、抵当の将軍の財産をとってパリに出発す ることになった。アレクセイは勝ったのだ。彼が部屋に戻ると、今まで頭を下げたことのないポリーヌが、卑劣な侯爵へ復讐をしたいと相談に来ていた。ポリー ヌを部屋に残すと彼は侯爵に叩きつける金を得ようと賭博場へ向った。最後の金貨一枚を賭けたアレクセイは勝ち続け、我に返った時は約束の時間を過ぎてい た。大金を持帰ったものの侯爵が去ってしまっては何にもならない。ポリーヌはアレクセイの居ない僅かの隙に自殺した。彼女の遺体を乗せた汽車を見送るアレ クセイは、受けた傷の深さをかみしめていた。彼の後姿には強い孤独感が漂っていた。
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