ミニ日仏懇親会!?笑いが絶えないインタビュー:『父と息子』ミシェル・ブージュナ監督&パスカル・エルベ:インタビュー。
本国フランスで100万人以上の観客を動員し、大ヒットとなったヒューマン・コメディ『Pere et fils / ファザー、サン 』。父は3人の息子の不和を嘆きもう一度父子の絆を取り戻そうと、嘘をついて4人でカナダのケベックへクジラを見に旅立つ。そして旅先で徐々に関係を修復していく様子がコミカルに描かれている。本作品で監督に初挑戦したミシェル・ブージュナ( Michel Boujenah )監督と、脚本作りにも加わり末息子のシモン役として出演もしたパスカル・エルベ( Pascal Elbé )さんにインタビューさせて頂いた。二人は日本への関心がとても強く、映画とは離れた話で盛り上がった場面もあった。
――まず、日本の印象をお聞かせください。
エルベ:礼儀正しくて、温かくて、好奇心に満ちているよね。誠意を持っていて、繊細な感じもする。
監督:物事に対する感度が高いと思う。そして恥ずかしがり屋で謙虚だね。
――ゲストの中でもかなり精力的に動かれているようにお見受けします。私は大学への講演会に同行させて頂いたのですけれど、いかがでしたか?
エルベ:最高。映画のことに限らず、人生のこと、戦争のことも話せてよかった。国が違う者同士のカンファレンスは重要だね。日本人にとって皆の前で意見を言うことは恥ずかしいかもしれないけれど、本当はそうすることを渇望しているんじゃないかと思ったよ。
監督:遠くて、伝統的なものが多くて、ミステリアスな日本人をよく知るには時間がかかる。少しの時間の会話だけではわからないことばかりだよ。ぼくらは、知りたくて知りたくて仕方ないんだ。教えてくれるかい?
――私が答えられる範囲でよろしければ。では何を?
監督:日本の文化の中には、ルールとして自分たちにはないものが多くあるよね。たとえば日本人は「こんにちは」と挨拶する時、ぼくらのように体を触れ合ったりしないよね?
――相手とある程度の距離を保つことが日本では普通なことで、失礼には当たりません。むしろ、むやみに相手の体に触れる方が気分を害することになってしまいかねません。
監督:ぼくは南アフリカの生まれなんだけど、そこではそういった時に相手に触れることが礼儀なんだ。違うんだね、面白いね。
エルベ:体に触れたりしないなら、愛の告白や恋人同士はどうするの?「すきです」なんてプラカードを持ったりして気持ちを伝えるの?(笑)
――そんなことはしません(笑)もちろん恋人同士は手をつないで歩いたりしますし、若いカップルの中には フランスのカップルのようにする人たちもいます。ですが古くからの美徳として、外という公共の場では あまり親密な行動をしないというのはあるかと思います。
監督:やっぱり繊細だよね。興味深い話だよ。ありがとう。
――では、映画の話を。脚本のベースは実話だそうですが、エルベさんが演じているシモンにはモデルはいるのですか?
エルベ:いや。特定の人物はいないよ。でも、僕の中にもミシェルの中にも通訳さんの中にも、そして君の中にもシモンはいるよ。弱い部分がね。ただ僕が思うに、シモンは一番若いけれど一番賢いんじゃないかな。マリファナも吸うし服装もだめだし「ホモセクシャルかも!?」なんていう疑いをかえられたりもするけれど、実は彼が一番家族に愛情をもっている。そういう部分は、僕とシモンは似てるよ。
――ラストのあたりで、お父さんのレオだけクジラを見ますよね?なんとなく光り輝いている感じで現実なのか幻なのか判断しかねたのですが、どんな意図が?
監督:まず第一に、クジラを見るということは、息子たちでなくレオの夢だったんだ。そして旅の終わりに、何かあり得ないことを起こす必要があった。あの時期にクジラを見るということはあり得ないよね。レオのイメージだったかもしれないし、現実かもしれない。曖昧にするために、しぶきや水面の波紋はわざと静かにしたんだ。レオが息子たちに何も言わなかったのは、また嘘をついていると思われたくなかったからだよ」
――父子が絆を取り戻すことと、見れないはずのクジラを見ること。二つの奇跡のようなことを重ね合わせているのですね。
エルベさん:とても寓話的で詩的な映画。これを観て、人との信頼関係の大切さを分かってもらいたい。
横浜 フランス映画祭 - 2004 / 日本
(村松美和)