解雇する側のドラマを描く『 Violence des echanges en milieu tempere / ワーク・ハード、プレイ・ハード 』来日ゲスト単独インタビュー。
――本作は繊細で正義感の強い青年が社内のクビ切り役を命じられ、葛藤する人間ドラマです。長編デビュー作にこうした題材を選んだのは?
ジャン=マルク・ムトゥ( Jean-Marc Moutout )監督 実は短編の時から社会問題を描いてきて、長編となる本作でもシノプシスはかなり早いうちに決まっていた。企業のトラブルも、失業問題もヨーロッパでは同時代的なテーマだからね。撮影に入る前はアメリカのコンサルタント会社に取材に行ったり、マネージメント関係の膨大な資料を読み込んだな。
――主人公にジェレミー・レニエ( Jérémie Renier )、その恋人にシリア・マルキ( Cylia Malki )をキャスティングした理由は?
ジェレミー・レニエ 僕らがすばらしいからさ(笑)。
ジャン=マルク・ムトゥ監督 確かにそうだね(笑)。この作品には登場人物がたくさん出てくるんだけど、それぞれが複雑に対峙している。キャスティングにおいてもそうした組み合わせが重要だった。まず、ジェレミーは一番最初に決まった。これは簡単だった。この役には彼が一番だと直感的に思ったからね。逆に恋人のキャスティングは当初、難航した。精神的にもろいものを持ち、主人公とは別の世界に生きている、そんな空気感を納得いくように表現できる女優を探していたからだ。そうして、結果的にシリアが見つかった。
――役者のお2人に役作りについて聞きたいのですが。
シリア・マルキ うーん。どっちから(レニエを見て)?私から言うの?うーん…。監督、助けて(笑)!エヴァという女性は、そうね、なんて説明したらいいのか、ちょっとわからないんだけど。役柄を作り上げていったというより、価値をあげていった、そんなニュアンスじゃないかな。それも一人でやったわけではなく、シナリオを読み込み、監督と何度も打ち合わせしながらこの役の価値を高めていったの。
ジェレミー・レニエ 今回、チャレンジしたのは自分がまったく知らない世界だったんだよ。あの髪だってカツラだったしね!ウソ、髪は本物だけど、監督と一緒にコンサルタントに会ったり、会社に行ったりして役を作っていったんだ。フィリップって男は白でもなく黒でもない、グレーゾーンで右往左往する。葛藤を抱えた奴だからその点は監督と話し合って決めていったよ。
――監督に。ラストが意外な気がしたのですが…。実を言うと、あれとは全く別のオチを想像してました。
ジャン=マルク・ムトゥ監督 そうかい(笑)?物語のどの辺りまでそうと思ってたの?
――ラスト10分前までは(笑)。
ジャン=マルク・ムトゥ監督 実はね、あのラストも早い段階から決めていたんだよ。ミッションに成功し、車もあれば、バカンスもあり、女性もいて…まぁ、詳しいことは観てもらって、ってことにしておくけど。
――さて、今回、初来日だそうですがどこか行きたいところは?また、本映画祭の上映作品のうち、見たものはありますか?
ジャン=マルク・ムトゥ監督 昨日は3人で「父と息子たち」を観たよ(笑)、この映画祭でね。ちなみに僕は東京に行って、日本を観光してから帰ろうと思ってるよ。
ジェレミー・レニエ 僕は「あなたを待つ人生」も観たよ。ただし、これも飛行機の中でだけど(笑)。実は映画ってそんなに観ないんだよね。
シリア・マルキ 私は「 Apres vous / お先にどうぞ 」、「あなたを待つ人生」は観てる。昨日、「 Viva laldjerie / ビバ!アルジェリア 」も観たかったんだけど、時差ボケで眠くって観れなかったのよ(笑)。