自伝的要素の色濃い『メトロで恋して』で長編監督デビューを飾ったアルノー・ヴィアール監督!:インタビュー。
迷える32歳、独身男性アントワーヌの恋の行方を繊細かつリアルに描いてパリっ子の共感を集めたラブストーリー『 Clara et Moi / メトロで恋して 』。本作で長編監督デビューを飾ったのが俳優出身のアルノー・ヴィアール( Arnaud Viard )監督だ。
Q=今回は初来日ですか?
A=いいえ、2度目です。経営学を学んでいた20歳の時に2ヶ月間滞在しました。一種の留学で、1週間は京都に、残りは東京に滞在しました。僕は26歳の時に全てを投げ捨てて俳優に転身したのですが、その前は広告業界で働いていたんですよ。
Q=俳優に転身した理由は?
A=地方のブルジョワ家庭に生まれたのですが、俳優になるという選択肢は考えられない状況で育ちました。でも俳優には憧れを感じており、天職は俳優だってずっと思っていましたね。広告業界ではコカコーラを担当していたのですが、その売り上げを伸ばすためにアクセクと働くことに疑問を感じたのを機に演劇学校に通い始め、その2ヶ月後に会社をやめたんです。
Q=この作品は自伝的要素の強い作品だそうですが、どの程度までご自身を投影なさっているのでしょうか?
A=この映画は私の長編第1作なのですが、自分のちょっとした紹介を兼ねた描写を第1作目に挿入するのが、フランス映画の伝統なんです。どんな家庭環境にあるのか、どんな映画や文学が好きなのか等々ね。なので、その伝統にのっとり、僕自身の趣味趣向をあちこちに散りばめています。でもエイズの恋人がいたことはないし、女の子を地下鉄でナンパしたしたこともありません(笑)。これらは全くのフィクションです。父との確執は実際にありました。ジュリアン・ボワスリエ( Julien Boisselier )とジュリー・ガイエ( Julie Gayet )が主演していますが、ジュリアンは私を代弁する分身のような役です。彼の演技がすごく自分に合っているので起用しました。ジュリー・ガイエの演技もとても自然で、実際にこんな恋人がいたら良いなと思うタイプの女性です。
Q=では弟の性格を見抜いているお姉さんは実在していますか?
A=はい。ただし妹なんですけどね。実は妹も俳優で映画でアントワーヌの姉を演じているのが彼女なんです。名前はマリアンヌ・ヴィアール( Marianne Viard )です。妹は僕の影響で女優になったんだと思いますが、年が離れているので俳優になった時期はほとんど一緒でした。会う度にケンカしているのも映画と一緒です(笑)。
Q=そうなると気になるのが映画の中でのお母様の存在の希薄さですね。何か訳でもあるのですか?
A=あはは! それには理由があります。実は僕の母親を本人の役で起用して撮影も行いました。だけどあまりにも演技がヘタだったので(笑)、編集でカットしてしまったんですよ。
Q=お父様役のミシェル・オーモン( Michel Aumont )さんは名優ですね。
A=ええ。彼の出演している芝居を観に行き、劇場の出口で彼を待ち構えました。そして挨拶し、芝居の感想を述べたんです。彼は僕の顔を知っていて「貴方は俳優ですね」と仰ってくれました。そこでシナリオを差し出して「これから長編を撮るんですが、私の父親役で出演して下さいませんか」とお願いしました。数日後に出演承諾のお電話をいただいたんです。
Q=アントワーヌの悪友のサッシャ・ブルド( Sacha Bourdo )さんの起用は?
A=実は一番始めにキャスティングしたのが彼でした。マニュエル・ポワリエ( Manuel Poirier )監督の『 ニノの空/ Le Western 』を観て気に入ったんです。彼はロシア人ですが、アントワーヌの悪友役にピッタリだと思いました。彼はとてもイイ俳優ですよ。
横浜 フランス映画祭 - 2005 / 日本
(KIKKA)