珠玉作『メトロで恋して』に主演したジュリアン・ボワスリエ&ジュリー・ガイエ:インタビュー。
迷える32歳、独身男性の恋をリアルに描いてパリっ子の共感を集めたラブストーリー『 Clara et Moi / メトロで恋して 』。主人公のアントワーヌを演じたジュリアン・ボワスリエ( Julien Boisselier )と主人公の理想の女性クララ役のジュリー・ガイエ( Julie Gayet )に話を聞いた。
Q=フランスの公開時には多くのパリっ子の共感を得てヒットしたそうですが、その理由は何だと思われますか?
ガイエ=これが、ある一つの世代を如実に描いた映画だからじゃないかしら。多くの人がアントワーヌやクララに、自分と何か近いモノを感じて共感したんだと思うわ。こんなことは滅多にないことなんだけど、私自身この映画を見直した時、ぐっときて感動しちゃったもの。
ボワスリエ=僕は監督と知り合って2年ほどなんだけど、主人公のアントワーヌは本当に監督に似ているんだ。優しくって穏やかで、女性に敬意を払ってるし愛している。この作品はアルノー・ヴィアール( Arnaud Viard )監督の長編第1作目なんだけど、監督は自分自身がどういう人間なのかを映画を通して描きたかったと言っているんだ。観客は、そんな彼の穏やかなパーソナリティを感じ取って心地よかったんだと思うよ。それが成功の要因だったんじゃないかな。
Q=お二人が出演に至った経緯を教えて下さい。
ガイエ=監督と初めて会った時、この人は私と同じ世界に属している人だなって感じました。彼の友人たち、つまりこの映画に登場するアントワーヌの友人たちは、私のまわりにいる人たちによく似ているの。今まで自分自身とかけ離れた役を演じることが多かったんだけど、今回は最初にシナリオを読んだ時点で、素の自分を表現できる良い機会だなって思ったわ。
ボワスリエ=実は最初のオファーがあった時、僕は出演したいとは思わず、話を断ったんだ。だけど撮影の3ヶ月前に監督が電話してきてね、再度依頼された。「本当に申し訳ないんだけど、アントワーヌの役は君しか考えられないんだ。なので本当に申し訳ないけど考え直してもらえないだろうか」ってね。僕はその謙虚な口調と、そこまで彼が僕のことを考えてくれてるってことに感動した。また、最初に感じたことに信念を持ち、それに忠実に作品を作ろうとしている彼の姿勢にもほだされたよ。何しろ第1作目だから、どんな作品になるか見当もつかないけど、それに賭けてみてもイイかなって気なったんだ。それに監督はシナリオも書き直してくれていたしね。
Q=シナリオはどのように書き直されていたのですか?
ボワスリエ=最初のヴァージョンのアントワーヌはとてもお喋りな人物だったんだ。だけど第2稿はセリフをかなり削ってあり、沈黙に趣をおいたシナリオになっていた。それによって物語の展開もスムーズに流れるようになっていた。この自伝的な作品世界はフランソワ・トリュフォーやクロード・ソーテ作品に通じるものがあるなと感じたんだ。そう感じられたことが安心感にも繋がったので、出演をOKしたんだ。
ガイエ=この映画は本当に低予算でスタッフも若い人ばかりが集まっていたの。俳優とスタッフが一丸となって、お金のためじゃなくイイ作品を作ろうという思いのもとで頑張ったのよ。
Q=ラストシーンの解釈については監督から何か説明または指示がありましたか?
ガイエ=この最後のシーンはみんなで考えて作ったシーンなんです。その後2人はどうなるんだろうってね。私自身は、元のサヤには戻らないわって言い、監督は、また一緒になるよって言い、ボワスリエは分からないなと言ったの。そういうところから出発したんだけど、話し合った結果、監督がどうしても窓越しにクララの微笑むカットだけは入れさせて欲しいって言ったの。それがひょっとしてという希望の光を残すからって。その直前にクララが「許せないわ」と言い放ったとしてもね。
ボワスリエ=観客の反応が面白いんだ。男性の多くは「また一緒に付き合うよ」と、とても楽観的な見方をするし、女性の多くは「ダメよあの2人は」って答える。男性と女性の見方って本当に違うんだなぁって痛感したよ。
Q=印象に残っているシーンは?
ボワスリエ=何と言っても、カフェのシーンだな。
ガイエ=私も!この映画はラブストーリーだけど、もう一つのサブストーリーとして、父と息子の和解の物語があり、大切なテーマになっているでしょ。だから2人がレストランで向き合うシーンも大好きよ。
横浜 フランス映画祭 - 2005 / 日本
(KIKKA)