『アレックス』出演ライズ・サーレム インタビュー。
音楽は一切使わず、大げさな身振りもなく。ジョゼ・アルカラ( José Alcala )監督『 Alex / アレックス 』はリアリズムの系譜を踏む人間ドラマである。ライズ・サーレム( Lyes Salem )が演じたのはヒロイン、アレックスを愛しつつ、どこか影のある男。自身、映画監督でもある彼に映画秘話を聞いてみた。
――あなたが演じたカリムという人物について。自身との共通点は?
カリムは孤独でどちらかというと人とはあまり関わりたがらないタイプだね。唯一関係しているのはアレックスだけ。すごく閉じこもった感じがするけど、僕自身、どちらかといえば孤独を愛する方でね。いつも、集団から少し離れてる感じがある。
――現場でも?
いや、今回は逆だったかな(笑)。この映画がどちらかというと暗くて重いものじゃない?現場では無意識に軽く振舞ったのかもしれない。それに今回、夜中の撮影が多かったんだ。周囲が寝静まっている中で撮影をするのは思い出深いものがあったね。
――難しかったシーンは?
アレックスに「ジュ・テーム」を言う場面だ。監督のイメージと僕のそれとがちょっとズレていたらしく12回くらいは撮り直したかな。トーンとか、微妙なニュアンスとか…。でも、15分くらい休もうってことになって、その後再開したらうまくいったけどね。
――あのシーンはよかったですよ。ところで、アレックスのような女性をどう思う?
すごく好きだね。エネルギーを内に秘めているような女性はどこかしら気を惹かれるところがある。アレックスには劇中では語られない部分もあって、それがよりミステリアスな魅力につながっている。なんだかわからない部分に関わってみたいような、そんな気にさせる女性だね。
――カリム自身も劇中では語られないストーリーがありそうな人物ですよね。彼にはどんなサイドストーリーがあったと思う?
役づくりのために、役者はそういったストーリーを作ることがあるね。僕がカリムについて考えたのは人生に少し絶望している人物だ。多分、彼なりに何かにチャレンジしてきたこともあっただろう。タイミングが悪かったのか、実力がなかったのか、そういう試みは失敗に終わってしまった。そうして、徐々に自分の殻に引きこもってしまった。その行く末が劇中で僕らが見ている彼だよ。
――話は変わりますが、スピルバーグの『ミュンヘン』に出ているそうですね。海外の作品に出ることについては?
『ミュンヘン』はごくごく小さな役だ。ベイルート戦でコマンド部隊に殺される役だからね。まぁ、だから自分のプロモーションに使う気はまったくないよ(笑)。でも、海外の映画にはこれまでも何本か出ている。個人的にはこういう経験は歓迎だね。いろんな監督と仕事をしたいと思うし、日本映画にも出てみたいと思う。言葉の問題はあるけれど、その分、動きや表情なんかで演技するってこともあるだろうし。
――先ほど、ロビーでカメラを抱えていたのを見かけたんですが、東京散歩に?
そう。せっかく来たんだからね。いろんなところを観て、いろんなところをカメラに撮りたいと思った。昨日は京都に行ったんだよ。金閣寺を観たけど素晴らしかった。僕は三島由紀夫の同名小説が好きでね、日本に来たら是非行こうと思っていた場所だ。でも、昨日は伝統的な日本を見たと思えば、今日は六本木ヒルズにいる。伝統と先端技術の融合がこの国の面白いところだよね。
French Film Festival in Japan - 2006 / 日本
(取材・文 寺島万里子)