あらすじ
18歳のヴィオレットは、狭いアパートで厳しく彼女を監視する親のもとで暮らすことに息苦しさを感じ、カルティエ・ラタンで自由に過ごすことを夢 見、ある日、両親を殺してしまう。30 年代、実際に起きた事件を題材にしたシャブロルの代表作の一本で、ユペールと最初にコンビを組んだ作品。この事件は当時、シューレアリストのアーティスト たちの作品の題材になるほどフランス社会に大きな反響を呼んだ。
Source : institut.jp
クレジット
監督 (1)
俳優 (51)
映画製作・配給会社 (5)
- 製作代表 : Filmel
- 共同製作 : France 3 Cinéma
- 海外製作作品 : Cinévidéo
- Film exports/foreign sales : Editions René Château
- フランス国内配給 : Gaumont
クレジットタイトル詳細 (21)
- 製作代表 : Eugène Lepicier
- Screenwriters : Elisabeth Huppert, Odile Barski, Hervé Bromberger, Frédéric Grendel
- フォトディレクター : Jean Rabier
- 作曲家 : Pierre Jansen
- Assistant directors : Philippe Delarbre, Brice Auboyneau
- 編集担当 : Yves Langlois
- 録音技師 : Patrick Rousseau
- Costume designer : Pierre Nourry
- 海外プロデューサー : Denis Heroux
- オフレコ : Claude Chabrol
- 音声アシスタント : Gérard Dacquay
- 撮影技師アシスタント : Jean-Marc Rabier, Michel Thiriet
- 撮影技師 : Richard Ciupka
- 製作部長 : Roger Morand
- Sound editor : Anne Lafarge
- Assistant editor : Marie-Aimée Debril
- スクリプト : Aurore Chabrol
- Foley artist : Gilbert Nottin
- 美術装飾 : Jacques Brizzio
- サウンド・ミキサー : Alex Pront
- スチールマン : Roger Corbeau
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技術面詳細
- タイプ : 長編映画
- ジャンル : フィクション
- サブジャンル : ドラマ
- テーマ : 殺人
- 言語 : フランス語
- 出身 : フランス, カナダ
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テレビ放送
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About
『ヴィオレット・ノジエール』(Violette Nozière)はシャブロルが1978年に発表した映画である。ステファーヌ・オードランとの蜜月後、シャブロルは本作でイザベル・ユペールと出会いを果たす。彼にとってはメルクマールとなる作品である。ユペール扮するヴィオレットの母親ジェルメーヌを演じているのがオードランである。ユペールからオードランへ。シャブロル映画のミューズの劇的なるバトンタッチである。ユペール演じるヴィオレットは、1933年に、18歳という若さで両親を睡眠薬で毒殺しようとした*1実在の女性である。殺人の動機を、父親からの強姦されたと証言した(のちに虚言であることが判明するが)ことからセンセーショナルな話題を振き、シュールレアリストたちは、こぞってその「悪」に魅了された。「ヴィオレットはどこまでも形而上の女(ひと)」と歌ったのは、かのアンドレ・ブルトンである。
全編を覆い尽くす、甘く、けだるい雰囲気。黒いクローシェに黒外套に身をつつんだユペールのどこかふてぶてしい身体。頽廃的ムードのなかで、少女の内奥でまがまがしい「何か」がゆっくりと芽生え、梅毒のように(実際にノジエールは罹患していたのだが)、彼女を蝕んでいく……。今回のシャブロルの翻訳*2にさいして日本未公開作品をDVDで数多くみたのだが、この映画はシャブロル映画傑作中の五本の指に入るのではないだろうか。この作品と『帽子屋の幻影』はシャブロルのノワールな世界が余すところなく結晶化されているのだ。
死刑を宣告されたこの少女は数奇な運命をたどる。ペタン元帥やド・ゴール将軍による恩赦によって、名誉回復をうけ、天寿を全うしてしまうからだ。だがそれは「恩寵」だろうか。この作品ののち、シャブロルはユペールを起用しギロチン刑に処せられる実在の女性、マリー・ルイーズ・ジローの生涯を描いた。『主婦マリーがしたこと』がそれである。一見、二人の女性には何の接点もないが、同じ女性が演じることで、どこか双子姉妹のようにも思える。あるいは、サド侯爵が描いた、悪徳の姉妹のイメージか? 社会によって許されることと処罰されること。そこにどのような違いがあるのだろうか。そこで浮かび上がるのは法規によって律することのできぬ、人間の営為の不条理さだ(この論集には映画評論家の大寺眞輔氏が『主婦マリーがしたこと』を執筆されている)。
本作では、ジャン=マリ・フィテールの同名のノン・フィクションをもとに、シャブロルとオディール・バルスキがシナリオを書いている。バルスキは『刑事ベラミー』まで断続的にシャブロル映画に協力してきた「盟友」で、彼女の二人の子供たち(ロドルフ・ポリーとアドリエンヌ・ポリー)もシャブロルの映画に出演している。二人はかなり想像力をふくらませて脚色したのだろうと思ったのだが、原著を取りよせて読んでみたところ、細部に至るまで忠実でありいささか驚いてしまった。この作品の魅力は、彼が安易な解釈や理由付けを徹底して排除したところにある。
本論では、シャブロルのフィルモグラフィーをたどりつつ、原作と対比しながら、この作品の魅力をあぶり出そうというものである。シャブロルの生前、日本においてこの作品が正当に評価されなかったことは残念であるが、今後少しでも光があたることを願わずにはいられない。
Source : d.hatena.ne.jp