あらすじ
年上の夫フィリップ(ポール・ジェゴフ)は、美しい妻エステル(ダニエル・ジェゴフ)と幼い娘エルシーと三人、郊外の邸宅で幸福な生活を送っていた。彼は自身の浮気を当たり前のことのように告白し、妻にも自由にしていいと寛容さをアピールする。しかし、妻が自分の気に食わないアラブ系の青年と寝たと知るや、激しい嫉妬にとり憑かれ、ついには恐ろしい暴力を彼女に振るい始める……。
Source : simplydead.blog66.fc2.com
クレジット
監督 (1)
俳優 (15)
映画製作・配給会社 (4)
- 製作代表 : Les Films La Boëtie
- 海外製作作品 : Gerico Sound
- Film exports/foreign sales : Artedis
- フランス国内配給 : Les Films La Boëtie
クレジットタイトル詳細 (18)
- シナリオライター : Paul Gegauff
- フォトディレクター : Jean Rabier
- 作曲家 : Pierre Jansen
- Assistant directors : Michel Dupuy, Philippe Delarbre
- 編集担当 : Jacques Gaillard
- 録音技師 : Guy Chichignoud
- Costume designer : Nadine Dessalles
- 海外プロデューサー : Alfredo Bini
- プロデューサー : André Genoves
- 音声アシスタント : Yvon Dacquay
- 撮影技師アシスタント : Raymond Menvielle, André Marquette
- 撮影技師 : Alain Douarinou
- 製作部長 : Pierre Gauchet
- スクリプト : Aurore Chabrol
- Foley artist : Louis Devaivre
- 美術装飾 : Guy Littaye
- サウンド・ミキサー : Maurice Gilbert
- 演出助手 : Patrick Delauneux
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技術面詳細
- タイプ : 長編映画
- ジャンル : フィクション
- サブジャンル : センチメンタルコメディ
- テーマ : 愛
- 言語 : フランス語
- 出身 : フランス, イタリア
興行収入・公開作品
テレビ放送
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ニュース&アワード
About
クロード・シャブロル監督といえば、こじれた愛情や人間関係が招く犯罪とその顛末を見つめる、一連のスリラー作品で知られている。人が一線を越え、ある種の怪物となっていく様を、シャブロルはつとめて冷静に、悪意をもって観察する。そこで起きる惨劇は誰にも止められず、決して避けられない。シャブロルの映画には常に観客を不安にさせる「イヤな感じ」がつきまとい、それが麻薬のような魅力となってファンの心を捉え続けるのだ。その感触が最も強い作品は、どれになるだろうか。寒々しく絶望的な『Juste avant la nuit』(1971)か。コミカルなタッチが逆に不気味さを際立たせる『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』(1972)か。見るからにヤバすぎるヒロインが絶品だった『石の微笑』(2004)か。
1975年に公開された『Une Partie de Plaisir(A Piece of Pleasure)』は、そんな「イヤな感じ」が最も極まった傑作ではないだろうか、と観ながら思った。ここでは、一見幸福そうな夫婦のたどる悲惨な崩壊劇が、インテリ階級への皮肉もこめながら淡々と描かれていく。
男のイヤな部分が凝縮されたような主人公フィリップのキャラクターが強烈。己の身勝手さに無自覚で、自分を懐の深い理性ある知識人だと思い込み、口先では進歩的なことを言いながら、結局は嫉妬・怒り・暴力衝動といったプリミティヴな感情に支配される凶暴なゴリラでしかない。それが人間の真実である、とシャブロルは暴露する。そんな本質を理解せず、全ては理性でコントロールできるなどと思って生きている現代人に、警鐘を鳴らすかのように。
まやかしの幸福が破綻し、家族の絆が決定的に壊れてもなお、しつこく幻影に追いすがる。そんな異常だがリアルな妄執を、ポール・ジェゴフはごく自然体の演技で、絶妙に演じている。彼は本作の脚本家でもある。そして妻を演じるダニエル・ジェゴフは、実際に彼の元妻でもある。そして娘役のクレマンス・ジェゴフも、彼らの本当の子供である。この映画に漂う、妙に真に迫った生々しさは、彼らが本当の(壊れた)家族だからもたらされているのではないか。アニエス・ヴァルダの『幸福』(1964)を百倍ぐらい容赦なくしたような家族の崩壊劇を、書いた当人とその家族に演じさせるシャブロルは本当に意地が悪い。というか、引き受ける方もどうかしてると思うが。
クレマンス・ジェゴフの可愛さといったらない。本物のパパとママを相手に演技しているので、その表情には生硬な芝居くささが全くないのだ。ラスト、彼女が鉄格子の向こうにいる父親に問いかける「ママはどこへ行ったの?」という台詞の屈託のなさは、シャブロルが仕掛けた悪意の真骨頂である。大人になってこの映画を観た時、彼女はどう思っただろう? また、劇中で彼女がつぶやき続ける数字のカウントも、絶望的な余韻として観客に忘れがたい印象を残す、秀逸なモチーフとなっている。
ポール・ジェゴフはかの名作『太陽がいっぱい』(1960)を手がけた名脚本家であり、シャブロルとも『二重の鍵』(1959)や『女鹿』(1968)、『交換結婚』などで何度も仕事をしている仲。本作の主演候補には『女鹿』のジャン=ルイ・トランティニャンなどの名前が挙がっていたが、誰もこんなエゴイスティックで共感の持てない人物を演じようとしなかったため、最終的にジェゴフ本人が演じることになった。彼はジャン=リュック・ゴダール監督の『ウィークエンド』(1967)などにも出演しており、全くの演技未経験者ではなかったものの、『Une Partie de Plaisir』での演技はとても自然で、鬼気迫るリアリティに満ちている。相手役のダニエル・ジェゴフが投げかける冷たい目線にも、ひょっとしたら演技以上の感情がこもっているのでは……と疑いたくなってしまうほど、彼らが演じる破滅のプロセスは不気味な真実味を湛えている。本当にイヤな傑作だ。
Source : simplydead.blog66.fc2.com