“私は悪役に愛着がわく” 『ストーン・カウンシル』ギョーム・ニクルー監督へのインタビュー。
"フランスのスティーブン・キング"の異名を持ち、大ヒット作『クリムゾン・リバー/ クリムゾン・リバー 』の原作者としても知られるジャン=クリストフ・グランジェ( Jean-Christophe Grangé )の同名小説を映画化した神秘的で幻想的なサスペンススリラー。
ほぼノーメークで撮影に挑んだというモニカ・ベルッチ( Monica Bellucci )の熱演、そしてミステリアスな科学者に扮したカトリーヌ・ドヌーヴ( Catherine Deneuve )の共演も注目の作品となっている。俳優の新しい面を巧みに引き出し、この独特なビジョンを持った作品のメガホンをとったギョーム・ニクルー( Guillaume Nicloux )監督のインタビューをお届けすることにしよう。
Q.モンゴルの秘密の儀式をテーマにしたサスペンスということで、幻想的で神秘的な作品だったと思います。フランス映画でも珍しいタイプの映画なのではないでしょうか?
「そうですね。フランスでは珍しいと思います。こういった空想的で、幻想的な要素がある映画というのはあまりないですね。特にこれほど大きな予算をとったというのは、なかなかないと思います」
Q.そのスタッフといえば、デビッド・クローネンバーグ作品を始め、ハリウッドで活躍する撮影監督のピーター・サシツキー( Peter Suschitzky )さんが参加していますが、彼の良さを教えてください。
「まずは正確性があります。そして照明に対する研ぎ澄まされた感性。彼は本当に完璧主義なんです。彼の手がけた映画を見てるとよく分かりますよ。もちろんクローネンバーグの映画だけでなくて、いろいろな作品で素晴らしい仕事をしていますからね」
Q.モニカ・ベルッチの演技にはいつも驚かされます。その中でも本作では彼女にとって特にチャレンジだったと思うのですが。
「まさに演技がうまい俳優ですからね。そして優秀で美しい。プロフェッショナルです。本当に全身全霊を映画のために尽くしてくれましたし、それは監督にとってありがたいことです」
Q.カトリーヌ・ドヌーヴが悪役をするというのは驚きでもあるんですが、どうやってその悪役像を作り上げたのでしょうか?
「私は悪役だからこそ、愛着を覚えるというものがあります。ただ意地悪な面だけじゃなくて、はっきりしないような曖昧な人格も、様々な側面を持っているような悪人に惹かれますし、そういうキャラクターにしてますね」
Q.カトリーヌさんにもそのように指示したんですね。
「もちろん、一緒に進めていきました。それから特に、彼女自身が混乱するようなところを求めましたね。彼女は子供に対する執着を持っている。それを見せるようにするというところも出しました」
Q.俳優の側からアイディアが出て、イメージが膨らんだシーンはありますか?
「もちろん、常に耳を傾けるようにしています。彼らの提案は最大限生かすようにしていますね。彼女の役柄に対しても、とても豊かな要素をもたらしてくれましたね。それは毎日が驚きの連続ですよね。やはりお互いの意見交換ですから。その共同作業をより豊かなものにしてくれるんですよね」
Q.フィルムノワールが好きだと聞きましたが、この映画を作るにあたって影響を受けた作品は?
「いろいろな映画に影響を受けています。ただ、この映画に関して言えば、『ローズマリーの赤ちゃん』には特に影響を受けましたね」
Q.この映画では子供が大きな役割を果たしていたと思います。子供を演出するのは難しくなかったですか?
「いえ、特にそういうのはなかったですね。子供というのは自然体で新鮮なんですね。そういった意味では私の方が驚かされるような、発見するようなことがありますよね。そこが子供の演技のいいところなのかもしれません」
Q.原作を読んだ時の感想は?
「たいへん、豊かなストーリーだと思いました。ひとりの母親としての女性としての、その体験するアドベンチャーを描きたいと思いました」
Q.この終わり方はどこか続編を匂わせるようにもとれると思うんですが。そういう計画は?
「今のところはありません。映画の終わりというのは必ずしも解決というエンディングでなくてもいいと思うんです。そもそも私がそういうのは好きではないんです。映画を見終わった後も、できるだけ長く映画の世界にいて、観客の中で生き続けて欲しいと思うんです。監督が作る側が、エンディングを強要するというようなことはしたくないと思っています」
Q.観客の方に向けて、見どころを教えてください。
「このアドベンチャーに観客の方も一緒になって入りこんで欲しいということですね。モニカの演じている人物のアドベンチャーを見に来て欲しい。恐怖感や幸せを彼女と共に分かち合ってください」