フランス映画祭横浜のフレンドシップイベントー第7回Shortshorts Film Festivalが、去る7月4日閉幕した。
最新フランス映画短編も4作品出品、またフランス映画祭横浜2005 セレクションのスペシャル上映などフランス映画が大活躍した今回の映画祭。そして、7月3日に明治神宮会館にて行われたクロージングセレモニーでは、最優秀賞にルノー・フィリップス( Renaud Philipps )監督の「異常なし」(Rien de grave /Nothng Serious )が見事輝いた。
「高度な技術や予算がなくても、アイディア次第でどんな作品でも作ることができるということがわかったので、最優秀賞はすんなり決まりました。ショートフィルムならではの作品でした」(審査員談)
この受賞を受け、ルノー監督は言葉をつまらせながら「この映画を作ったすべてのスタッフに感謝したい。本当にどうもありがとう!!」と喜びの言葉を語った。
まずルノー監督は、自ら脚本を執筆したことの苦労について、
「物語を作るのは本当にたいへんでした。ばかばかしいストーリー展開をメインキャラクター1人だけで表現するのが難しくて。この作品の製作には、結局1年ほどかかったんです」とコメント。この作品のエンドロールには、たくさんの人の名前と同時に人の写真もたくさん出てくるが、それに対する質問には、「この作品は、スタッフだけで80人、音楽を演奏してくれたオーケストラを合わせると150人ぐらいの人がかかわってくれたんです。だから、名前と同時にみんなの写真を載せることで、一緒に働いてくれたスタッフたちに感謝の気持ちを表したかった」と説明。また、資金集めについては、
「とにかく、あらゆるところに電話をかけまくりました。出費を極力抑えるために、いかにタダで借りるかということに労力をかけましたね」と答えた。現在、監督は、長編用の脚本を書いているという。
また、『タンゴレッスン』( François Choquet)のフランソワ・ショケ( François Choquet )監督も来日し、自身の作品の上映後ティーチ・インのため登壇した。
また、7月4日最後のプログラムにあたるFFFY2005セレクション。上映されたショート・フィルム9本のスクリーニングの後、フランソワ・ショケ監督(左)とルノー・フィリップス監督(右)を招き、フランスのショート・フィルムの製作事情について話してくれた。
フランソワ監督は、フェミス/ La fémisというフランスの国立の映画学校で1年間学んだ経歴を持つ。FEMISは、各専攻に毎年10人ほどしか入学できない超難関校。これまでに、シャーロット・ランプリング( Charlotte Rampling )主演の『まぼろし/ まぼろし 』などを撮った実力派、フランソワ・オゾン( フランソワ オゾン )監督などを輩出している。今回上映した『 キッチン 』という作品を撮ったアリス・ウィノクール( Alice Winocour )監督も、フランソワ監督と同時期にFEMISに在籍しており、直接の面識はないものの、とても優秀だということを聞いていたという。
一方のルノー監督は、ソルボンヌ大学で映画を専攻したが、そこで学んだのは技術的なことではなく、主に芸術論だったという。
この8年間はパリにある映像の特殊効果を手がけるプロダクションに勤め、徹底した現場主義で映画製作の方法を積んだ。
Q.フランスで映画監督を目指すには?
「映画学校に行く前から友達と映画を作っていました。フランスではいろいろなところで映画製作基金を設けていて、そこに自分の作品を送って助成金をもらっていたんです」(フランソワ監督)
「映画監督になる道というのはもちろんひとつではありません。僕も小さい頃から映画に興味を持っていて、12歳から本格的に映画を作っていました。目標を持って映画作りに情熱を燃やせば、映画は作れると思いますね」(ルノー監督)
Q.ところで、このプログラムで上映した作品のエンドロールには、フランス国立映画センター( CNC - Centre national du cinéma et de l’image animée )や地方自治体など、いろいろな協力団体のクレジットが多く載っている。2人は今回SSFFに出品した作品を撮るにあたって、こうした基金を利用しましたか?
フランソワ監督
「“タンゴレッスン”はノルマンディー地方で撮影しました。CNCからの資金は受けませんでしたが、フランスには各地方にフィルム・コミッションというのがあって、そこに申請をし、助成金をもらいました。地方で映画を撮るということは、スタッフやキャストが大勢来てホテルを利用したり、現場スタッフを雇ったりと、地方にとってもいいビジネスになるし、映画になって世界中で上映されればその地方の宣伝にもなるので、各自治体は積極的に映画作りを応援してくれているんです」
ルノー監督
「僕はまったく公的資金の援助は受けませんでした。でも、ある実力派プロデューサーの力を借りたんです。僕は特殊効果の仕事をずっとしていて、たまたまそのプロデューサーが手がける映画の特殊効果を担当した。
編集作業をしていたある日、そのプロデューサーが来たので、彼が座っている席の近くに自分の脚本をさりげなく置いておいたんです。彼が案の定“なんだい、これは”と聞いてきたので“僕のショート・フィルムの企画なんですけど、いや、何でもないですから”と言ったら“どれどれ、ちょっと見てみるよ”と (笑)。そうやって自分でアプローチするのも大切なんじゃないでしょうか」