階段通りの町、リスボン。夜明けの薄明の中、夜警が家路に着くと、12番街では老女(グリシニア・クァルティン)が起き出し、路上で立ったまま放尿 する。朝のラッシュアワー、階段通りを通勤客の洪水が通り過ぎるが、それもやがて一段落。階段通りの貧民街の人々の最近の関心事は、通りの中ほどに住む盲 目の老人(ルイス=ミゲル・シントラ)が、「恵みの箱」をどこからか授かり、通行人からお恵みの金を集めて少々羽振りが良くなった事だ。老人の娘(ベアト リス・バタルダ)は洗濯女で、娘婿(フィリペ・コショフェル)は遊び人。階段通りの人々の老人に対する羨望は強い。老人の箱は誰かに盗まれていたが、新し い箱が都合され老人は家の前に座った。居酒屋の前の路上では豆売り女(イザベル・ルス)が店開きし、居酒屋には3人組みのチンピラや松葉杖の老人、流れ者 の音楽教授(ドゥアルテ・コスタ)ら常連客が顔を揃える。娘婿の遊び人仲間(ディオゴ・ドリア)が老人の家にやって来たが話題はやはり例の箱のこと。真っ 赤なドレスの娼婦(ソフィア・アルヴェス)が老人に優しい声をかけ、箱に金を落とす。チンピラ3人組が老人の箱を回し投げしてからかうが、娘婿がナイフで 脅してやめさせた。いったん静まった階段通りにギターの調べが流れ、老人は居眠りし、その様子を靴磨きの少年と仲間が見ている。居酒屋の主人(ルイ・デ・ カルヴァリョ)が、自分にとってこの店は教会のようなものだというのに応えて、教授はギターで『アベ・マリア』を奏でる。素人画家が画架をセットしはじめ た頃、突然悲鳴が。またしても老人の箱が盗まれたのだ。町の人々やアメリカ人観光客、ニセの盲人ら集まった人々を前に、娘婿はチンピラたちが盗んだと息巻 く。ケンカの末に、娘婿はナイフでチンピラの一人を刺殺してしまう。やがて彼は逮捕され、娘は父に、明日は施設に連れていくと残酷に宣言。だが、その一瞬 後、老人はナイフで胸を突いて自殺した。夜が訪れ、〈時の踊り〉が階段通りを幻想に染める。冬が来て、階段通りに黒いヴェールに身を包んだあの娘の姿が あった。自分の不幸な身の上を書いた石板を見せてお恵みをもらい、人々に分け与える娘を見て人々は、彼女こそ聖女だと思う。階段通りに『アベ・マリア』の 調べが流れる。
Source : movie.goo.ne.jp