パリ法曹界に名弁護士の名の高い、中年のアンドレ・ゴビヨ(ジャン・ギャバン)は、ふとしたことからブロンド娘イヴェット・モーデ(ブリジット・バ ルドー)の弁護をひきうけた。彼女は、金に困った末に、子供の遊びのような計画をたて、女友達と二人で宝石商を襲ったのだ。この罪は、ゴビヨの努力によっ て、犯行直後に彼女が行ったバーのバーテンを買収することで無罪となった。こんな事件にゴビヨを専念させ、彼に危い橋を渡らせたのは、コケティッシュなイ ヴェットの、あやしい魅力をもった肉体だった。妻ヴィヴィアヌ(エドウィジュ・フィエール)の冷たい視線をよそに、ゴビヨはイヴェットの肉体に溺れていっ た。そんな時、彼の老いらくの恋にマゼッティ(フランコ・インテルレンギ)とよばれる医学生のライヴァルが現れた。夜は工場に働いて苦学するこの青年は、 初めてしったイヴェットの身体に情熱を燃え上らせ、二人はゴビヨの留守に逢う瀬をつづけた。しかしイヴェットは、マゼッティの要求にもかかわらず、不自由 のない囲われ者の生活をやめようとはしなかった。折からバーテン買収による偽証事件が発覚して、ゴビヨは二年間の法廷生活停止を宣告された。けれど、ゴビ ヨのイヴェットへの情熱はかえって拍車をかけられるばかりだった。彼は、もう二度とマゼッティに会わぬという手紙を書かせた上で、豪華な邸宅を買って彼女 をそこに移らせ、ジャニーヌという女中をつけた。そしてイヴェットは妊娠した。狂喜したゴビヨは、もう世間態もはばからず、彼女をスキーに連れていくこと にした。ところが、洋品店にスキー用のセーターを買いに行った帰途、イヴェットは、行方不明となった。夜になってイヴェットの邸に電話をかけ、それを知っ たゴビヨは不吉な予感から警視庁にかけつけた。彼の予感は、はずれてはいなかった。警視庁の刑事は、彼にイヴェツトの死を告げた。刑事にともなわれて行っ たマゼッティの下宿には、イヴェットの硬直した死体があった。「娘が帰るというのに、男が帰さなかったのだそうです、これはあなたの弁護した娘でした ね?」という刑事の言葉も、放心したゴビヨの耳にはもう入らなかった。
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