まだ初々しいアジャーニ、19歳の 作品である。共演のドパルデューも若々しくほっそりしている。それぞれ、片や「アデルの恋の物語」で、もう一方は「1900年」で若き天才の名をほしいま まにしていた頃だ。このセリ・ノワール(暗黒映画)はテシネのヒッチコキアンぶりを如実に示す凝った語り口で、赤い窓のアムステルダムを舞台に名匠P・サ ルドのスコアが画面を切り裂くように流れ、幻惑的なスリルを現出させる。
選挙戦さなかのアムステルダム。ボクサーのサンスンは有力候補者との過 去のホモセクシャルな関係をネタに、選挙妨害に加担、巨額の報酬を得るが、彼を追ってきた謎の男に殺される。恋人ロールは事件を追い、実は彼を殺した男が 彼と瓜二つであると知り、めまいのような戸惑いを覚える……。
濡れたような闇を捉えるニュイッテンのカメラ、豪華な助演陣も特筆すべき出来。ことに人のいい娼婦ネリーのM=F・ピジェは素晴らしく、彼女はこの役でセザール賞を受けた。
Source : allcinema.net