フランス映画史に残る古典として知らぬ者のない名作だ。時の摩耗にも耐えて、常にフランス映画の顔として君臨してきた作品。プレヴェール=カルネのコン ビの数ある“詩的リアリズム”作品の中でも、人間絵巻としてのボリューム感、横溢するロマンチシズム、純化された19世紀の風俗再現と、類を見ない、フラ ンス人にとっての永遠の一作なのだ。1840年代パリのタンプル大通り。パントマイム役者バティスト(バロー)は、裸に近い踊りで人気のガランス(アル レッティ)に恋をする。犯罪詩人ラスネールや俳優ルメートルも彼女に夢中だ。一方、バティストの属する一座の座長の娘ナタリーはバティストを愛していた。 ラスネールと悶着のあったガランスもその一座に加わるが、彼女の前には新たな崇拝者モントレー伯が現れる……、とここまでが第一部。第二部は、5年後のバ ティストはナタリーと、ガランスは伯爵と結婚。前者には一子もあった。が、ガランスを忘れられぬバティストはルメートルの手引きで彼女と再会。一方、劇場 で伯爵の侮辱を受けたラスネールはトルコ風呂で彼を襲撃し殺す。一夜を明かしたバティストとガランスの前には子連れのナタリーの姿が……。ガランスは身を 引く覚悟を決め、カーニバルの雑踏の中に消えていく。後を追うバティストの彼女の名を呼ぶ声、この壮大なラストシーンと、純粋すぎるほどに熱いバローの名 演、アルレッティの妖艶さは、まさに古典たるに相応しい風格を持って、映画の未来にも永遠に記憶されるに違いない。
Source : allcinema.net