横浜シネマテーク発足記念シンポジウムにパネリストとして招かれたティエリー・フレモー氏:インタビュー。
横浜シネマテーク発足記念シンポジウム『シネマテークはどうしてできたか?』のパネリストとして招かれたティエリー・フレモー( Thierry Frémaux )氏。フランス・リュミエール研究所のディレクターであり、世界最大規模の映画祭として知られる Cannes International Film Festival のアーティスティック・ディレクターを務めるフレモー氏にカンヌ映画祭の興味深い話を聞いた。
Q=カンヌ映画祭のアーティスティック・ディレクターとして、どのような年間スケジュールを立てて行動なさっているのですか?
A=カンヌ映画祭は、年を経るごとに1年単位での準備期間が必要になってきました。10年前までは、セレクションが1月に始まって、4月に終わるというかんじでした。ですが現在は、映画祭直後の6~7月から早くも様々な人々とコンタクトを取り始めなければなりません。現在撮影中の映画について、誰が今一体何を撮影しているのか、プロデューサーはどういう人が何をやっているのか等々の情報を収集し、まさに“空気を吸う”“雰囲気を嗅ぎ分ける”といった感覚で、来年の映画祭のための嗅ぎ分け作業に取りかかります。その後、それらの映画のリストアップをしていきます。7~9月はヴァカンス期間を除いて、色々な場所に旅行をするというか、各地に飛んでいって、現地でのコンタクト作り&カンヌ映画祭のピーアールを行います。10月に入るとパリに戻って、実際のセレクション作業に取りかかっていきます。
Q=日本映画を含め、アジア作品の動向に関する情報はどのように得ていらっしゃるのでしょうか?
A=様々な形で情報収集しています。まず、私自身が色々な人と直にコンタクトを取って状況を探りあてていきますし、友人を介して情報を得る場合もあります。私にはジャーナリストの知り合いも多いので、中国、日本、香港、韓国からの情報には事欠きません。いわゆる特派員も各地に送っていますので、ここからの情報もあります。いずれは日本にもカンヌ映画祭の特派員をおきたいと思っています。
Q=コンペティション、招待上映という公式上映作品の記者会見もフレモーさんの管理下で行われるのですか?
A=カンヌ映画祭の組織はチームで動いていますが、私のように常勤しているのは15人です。映画祭期間中のスタッフは1500人にふくれ上がります。記者会見等は会長のジル・ジャコブ( Gilles Jacob )が音頭を取っており、私の直接の管理下にはないのですが、“存在”というものを求められており、監督や俳優たちの側にいることを義務付けられています(笑)。
Q=今年のコンペティション部門にはそうそうたる監督の作品が出品されましたね。
A=今年はジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、侯孝賢を始めとする素晴らしい監督たちが揃いました。そして彼らがカンヌを彼ら監督同士のミーティング・ポイントというかランデブーの場所だと考えていることを知って嬉しかったですね。5月にカンヌで会おうねと互いに言っていたそうですから。ですが、映画祭は新たなモノを見出す場所であるということも忘れてはいけないと思っています。これからの映画界を担う才能の発見です。ですからコンペティション部門におけるメキシコのカルロス・レイガダス監督作や中国のワン・シャオシュアイ監督作、ある視点部門の諸作品を上映できたことを嬉しく思っています。
横浜 フランス映画祭 - 2005 / 日本
(KIKKA)