あらすじ
フランスの植民地アルジェリアの首都アルジェのカスバでの話である。カスバというのは回教徒が集まっている一劃の区域を指すのであるが、アルジェのカスバはアルジェの市街から独立した丘陵の上に位置し、家々は丘陵の斜面に重なる様に並び、露台で通じ合っているので、あたかも一大堡塁の様な外観を呈している。そして石畳の坂道は曲がりくねって外来者にはまるで迷路の如く、このカスバは東洋風の怪奇と秘密の世界である。この暗黒街に王者の様に畏敬され、友達の様に親愛されている男がある。ペペ・ル・モコと呼ばれるフランス人だ。強盗三十件、銀行襲撃二件とパリ警視庁の犯罪録に載っているお尋ね者である。アルジェの警察当局は武装して数回カスバを襲ったが、徒らに幾人かの犠牲を出すばかりで、ぺぺはおろか彼の配下の者一人もからめ取る事は出来なかった。ぺぺは彼にひたむきな思慕を寄せるモール生まれの女イネスのもとに起居していたが、此のカスバを一歩でも外に踏み出すと直ちに逮捕される事はよく知っていた。ぺぺが弟の様に愛しているピエロ、強欲大力のカルロス、盗んだ宝石を一手で捌く「爺つあん」、その他ジミイやマックス等が、常に影の如くぺぺに附添っていた。ぺぺは本国から此のカスバに逃れて既に二年、狭いこの地がまるで牢獄の様に思われ、望郷の念抑え難いものがあった。アルジェ警察の刑事スリマンはアラビア人で、カスバの地理に通暁している唯一の官吏だが、カスバでぺぺを縛ろうとしても、殺そうとしても、それは直ちに己れの死を意味する事を知っているので、ぺぺをカスバの外へ誘い出そうと気長く好機の到来を待っている。カスバの住民の中にも警察の手先になっている男がいた。レジスという脂ぎった爺と、アルビという小男であるが、ぺぺも彼の仲間もそれは知らなかった。パリの警視庁は腕利きの刑事を送ってカスバを襲わせた。しかしカスバはパリではない、彼等はものの見事に失敗した。この騒ぎの中に美しいフランス女ガビイは此処を見物に来て連れの者とはぐれてしまった。スリマンに助けられて原住民の家へ這入った時、右手に負傷したぺぺが現れた。ぺぺは一目でガビイに心を奪われた。次の日も彼はしつこくスリマンに彼女の事を訊ねた。レジスは国から遥々訪ねて来た母親が病気になっているとピエロに告げた。それを信じて街を降りて行ったピエロは何時までも帰らなかった。ぺぺはそれを聞くと恐怖に慓えるレジスを一室に監禁した。ピエロは傷を負って息も絶え絶えに帰って来ると、レジスに拳銃をつきつけたまま絶命した。カルロスはその手を握って拳銃を発射させた。この時からぺぺは酒に浸って街とガビイを狂気の如く慕うようになった。静かに時を待っていたスリマンは、時こそ到れりと狡猾な計略を運らした。ぺぺが射殺されたとスリマンはガビイに告げたのだった。傷心の彼女はパリへ帰るより他はなかった。ぺぺの手紙を持ったカルロスも街へ下りたきり帰らなかった。ぺぺは手先のアルビを責めてすべての事実を知ると、今は総てを振り切って街へ下りた。嫉妬に狂ったイネスはスリマンに密告した。ぺぺがガビイを探している時、スリマンと二名の刑事が彼を包囲した。逃れられぬ運命と知って彼は縛についた。遠ざかる船の甲板にガビイは立っていたがとうとうぺぺに気づかなかった。ぺぺは隠し持った小刀を腹に突きたてそのまま波止場へ崩れ伏した。ぺぺ許して、ペペ許して、と泣いて掻き口説きながらイネスはペペの屍をいつまでも抱いていた。
Source : movie.goo.ne.jp
クレジット
監督 (1)
俳優 (20)
映画製作・配給会社 (3)
クレジットタイトル詳細 (9)
- Adaptation : Jacques Constant, Henri Jeanson
- Screenwriters : Henri La Barthe, Julien Duvivier
- Directors of Photography : Marc Fossard, Jules Kruger
- 作曲家 : Vincent Scotto
- Editor : Marguerite Beauge
- 録音技師 : Antoine Archimbaud
- 原作者 : Henri La Barthe
- Producers : Raymond Hakim, Robert Hakim
- 装飾 : Jacques Krauss
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技術面詳細
- タイプ : 長編映画
- ジャンル : フィクション
- サブジャンル : ドラマ
- 言語 : フランス語
- その他の国の共同制作者 : フランス
- Original French-language productions : はい
- 製作年 : 1936
- フランス公開 : 28/01/1937
- 上映時間 : 1 時間 34 分
- 経過状況 : 公開済み
- ニュメロ·デ Visa : 787
- ビザ発行日 : 31/08/1940
- CNC助成 : はい
- 生産のフォーマット : 35ミリ
- カラータイプ : 白黒
- 画面セット : 1.37
- Audio format : モノラル
興行収入・公開作品
ニュース&アワード
ニュース (1)
映画祭でのセレクション (5)
About
「シュヴァリエの流行児」に次いで「舞踏会の手帖」の前に作られたジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品。アシェルベ探偵作の小説を素材としてデュヴィヴィエが原作者と協力してストーリーを書き、「ジェニイの家」のジャック・コンスタンが脚色、「舞踏会の手帖」「或る映画監督の一生」と同じくアンリ・ジャンソンが台詞を書いた。撮影は「地の果てを行く」「白き処女地」のジュール・クリュージェとマルク・フォサールが担当、音楽は「港の掠奪者」のヴァンサン・スコットとモハメド・イグルブーシャンとが作曲している。主演者は「我等の仲間」「地の果てを行く」のジャン・ギャバンで、「ドン・キホーテ(1933)」のミレーユ・バランを始め、「港の掠奪者」のリーヌ・ノロ、「パリの暗黒街」のガブリエル・ガブリオ、「我等の仲間」のシャルパン、「赤ちゃん」のジルベール・ジル、「ゴルゴダの丘」のリュカ・グリドゥー、「大いなる幻影」のマルセル・ダリオ、「熱風」のフレール及びフランス劇・映画壇の古参サテュルナン・ファーブルが助演している。
Source : movie.goo.ne.jp